孤高の頂きマッターホルンに立つ

 
  【 白い雲を吐き出すマッターホルン 】


  【 シバルッツゼーにて 】


1985年8月4〜5日

 
      【 ソルベィ小屋下部 】


【 ヘルンリ尾根に続く岩尾根 】
 昼まで暇潰しにメイン通りを歩く、駅前のカフェテラスでコーヒーを飲みながら、通り を行き交うさまざま人達、のんびりマッターホルンを眺めていた。昼頃ロープウェイに乗る人 は疎らで、貸切気分で乗る。
 ヘルンリ小屋までは、いくら荷物を持って行っても自由だと思い、カメラ2台、レンズなど ザックにつめ込む、ロープウエィ2回乗り継ぎ、シバルッツゼーに着く。
 モンテローザ、リスカム、ブライトホルン、マッターホルンなど、良く見え、名前の分から ない4000mの山々が、白く輝いている。マッターホルンからは、白い雲を、吐き出す様に 絶え間無く涌き出ている。写真を撮ってから、2:10分に、ハイキング気分でのんびりと歩 き始める。
 眺めの良い所には何故かベンチが置いてある。佐藤さんのペースが遅くなり、先に行く、暫 くなだらかな道が続く、眺めの良さは何とも言えない。やがてヘルンリ尾根に続く、岩尾根を 巻いて、岩尾根の上に登る。ここからも、なだらかな登りが続く、北壁が真正面に見え、36 0度の展望となる。小屋直下の岩場まで、ルンルン気分で、歩いていると、伊藤さん、大江さ んの2人に合い、一緒に歩き始める、小屋直下の登りは、ジグザグで最後の頑張りである。
 4時頃ヘルンリ小屋のテラスに着く、中には日光欲で、肌を焼いている、皆が、入り口のテ ーブルを、独占していた、着くなりワインで、喉を潤す、大きなデカンタで、4フラン全部飲 んだら、どうなることやら。まだ空は明るく、頭上に大きく高く聳える頂きから、白煙を排き 出す様に雲が靡いている。ここから見上げる、ヘルンリ尾根は、急な壁に見える。
 後に、日本人ガイドの草島さん、寺島さんが現れ、明日の注意事項と、荷物検査をすると、 言ってきた。朝の出発は迅速に、寝る前に全ての、用意をして置く事。一人一人の荷物を、見 て廻り、行動食が多いだの、包み紙は取り中身だけにしろ、まるで小学校の遠足、登攀に不要 な荷物は、小屋に置いて行く。私は、こっそりザックの中に、カメラ2台を忍ばせる。  夕食に、食堂に行く、グーテ小屋、クーベルクル小屋に比べると、ヘルリン小屋(名前はホ テル)は、作りも良く綺麗だ。食事は、スープから始り、メインが出てきて、デザートで終わ る、あまり美味いとは言えない、こちらの食事に慣れて来たせいか。
 食後に、ガイドの紹介と、組み合わせの、案内があり、年配者や、体格の大きい人は、スイ ス人ガイドの、がっちりとした大きいガイドとなる、私は最後となり、寺島さんとなる。安心 したような、がっかりしたような、妙な気持ちだった。暫く話をした後、ベットに戻り、明日 の準備をし、速く寝ようと思ったが、なかなか眠れない、気晴らしに、外に出ると、星が煌き ツエルマットの町灯りが綺麗だ、寒さが身にしみベットに戻る。
 まだ4時前だとゆうのに、回りはガタガタと煩い、外ではライトを付け、出発して行くパー ティもいた。4時前に起きるな、この話は何なのだ、そんな中、皆起きだし出発の準備を始め る。ヤッケを着、スパッツを付け、ハーネスを付けて、ザックとヘルメットを持ち、食堂に行 く、ガイドはもう食べていた。隣に座り、パンとコーヒーで、素っ気無い、ガイドはザイルを 出し、出発の用意を始めた。ザイルを結び合い、登攀の身支度を素早くし、4時30分小屋を 出る。
 尾根伝いに取り付きに向う、行き成り順番待ち、急な壁を20m程のフィックスロープを、 使って登る。手、足元をライトで照らしての登攀、超えて平凡な岩場が続き、ガイドに付いて 行くだけ、楽である。少し登るとツエルマットの灯りが、チカチカと深い眠りの中に有る、上 を見るとかなり先まで、懐電の明かりが延びている。左下にも懐電の明かりが、幾つか見える 、あれは全て、コースミスしたパーティだとの事、考えて見れば、決まったルートは無く、懐 電の明かりだけを頼りに、登攀するからミスを起こしやすい。
 星の光が物凄い、ヘッドランプの明かりで登攀は、チョット辛い。東の空が明るく成るに 連れて、山頂から次第に日が当たり、燃える様なモルゲンロートが、少しつつ下へ下へと迫っ て来る。朝焼けがとても綺麗だ、良い天気は長く続きそうにないだろう。
 登りながら、寺島さんと話をした、  ヘルンリ小屋を出て、2時間休まず登り続けかなりのパーティを、ゴボウ抜きにして日に当 たる、ソルベィ小屋に着く、小屋の直下も登りもかなりの高度感でスリルは十分だ。ここまで のルートはけして難しく無いが、ルートミスを起こし行き詰まるパーティが多い。
 一息ついてから、山頂に向かってひたすら登るのみ、行き成り垂直の登りが続く、高度感万 点の岩稜を1時間ほど登る。太いフィクスロープが現れ、ここを乗り越え肩の雪田に飛び出る 、アイゼンを効かせて更に登る。
 頂上直下の岩稜は、角度といいアイゼンでの登攀、高度の影響で登高は辛い。ここを乗り越 えるとすぐ、北壁に廻り込み、頂上の雪田に出た。ジグザグに登り切ると、これ以上高い所が 無い、細い雪稜のスイス側山頂だ。
 
   【 マッターホルン山頂 】
 右手少し下にイタリア側山頂の十字架があった。イタリア側の南壁から強烈な風が吹き上り 立って歩くと、北壁に飛ばされそうに成る。記念写真を撮りすぐ山頂直下の北壁に降りて、風 の無い所で小休止する。
 まだ朝の8時30分で朝が長い、やっと腰を降ろして休む事が出来た。ヘルンリ小屋を出て 4時間、今ゆっくりと弧峰の山頂から、360度の大展望を眺め、マッターホルンの山頂に居 る事の実感が出て来る。ここに登って来ないと、素晴らしさは伝え様が無い。
 下山は、登攀以上に神経を使う。3時間でヘルンリ小屋に着く。昼前に帰って来るパーティ は無く、のんびりと昼食を食べ登頂の乾杯をした。

   【 モンテ・ローザ 】


【 ツエルマットの町並み 】


   【 ソルベィ小屋上部 】

 
                 【 マッターホルン山頂 展望 】


     【 ソルベィ小屋 】