ユングフラウ登頂記


   【 アイガーの夕日 】    
1985年8月11日

   【 アレッチ氷河 】                    【 山頂の展望 】

 外はまだ薄暗い、速やかに朝食を済ませ、メンヒ小屋を5時に出発。空はまだ暗く星が キラキラと輝き、氷河は硬く凍り付き、アイゼンが小気味良く効いて快適に歩く。アレッチ氷河 の中央部あたりに来ると、我々より先に歩いて居るパーティを視界に捕らえる。今日の初登攀は 無理かと思ったが、ガイドのポール氏が、それを知ってかどうか、氷河のトレースを外れ直線的 に、氷河を渡って行く。クレパスが多くなり、迂回しながら通過する。
 いよいよユウグフラウ、取り付き尾根を登り始めると、東の空が紅になり朝日が綺麗だ。正面 に見えるユングフラウが、モルゲンロートに燃え上がる、次第に廻りの全山が、紅く染まりじっ くり腰を据えて、見て居たい所だったが、容赦無く先に進む。暫くミックスした岩稜を行くと、 先に居たパーティに追い着き、トップに出る。登りが次第に、急に成ると雪稜となり、大きく張 り出た雪庇の上を歩いて居る様な感じだ。登りが急でジグザグにトレースする、暫く登った様子 が無く、吹き黙りでは、膝まで埋まりラッセルしながら、急登を登攀する。
 追い越したパーティとは大分差が付き、高度はグングンと上がって行く、左手にはロートター ルホルンが聳えて見える、暫く登るとザッテルに着く、ザッテル越えは、10m位の雪庇越えに なる、その下で小休止。
 まだ朝の7時20分だ、ここからは、ユングフラウヨッホの駅も見え、登山者も蟻の行列の様 に見える、ザッテル越えは、雪庇を崩しながらのダブルアックスで、垂直の雪壁を登攀し乗り越 す、ここからユングフラウの南東稜が始まる。
 狭い雪稜を登る終えると、次は広い急な雪面出る、ルートはその左になり、露出した岩稜滞を 行く、切れ落ちた雪面をトラバースし、岩場に辿り着く、やがて岩稜も終わり急な雪面を登るが アイゼンが効かない、良く見るとカチカチに氷付いた上に、新雪が積もっている、一歩一歩カッ ティングしながら登る。高度が上がるにつれ風が強くなり、呼吸が苦しい、一歩一歩かみ締めて 登る、8時45分山頂に着く。
    

   【 ユングフラウ山頂 】 【 サングラスが似合うポール氏 】

 360度の展望は素晴らしい、遥か遠くには、モンブラン、マッターホルンも見え、日本の山 とは違う、山の大きさは山頂に立つ度に感じた。本日の初登攀を胸に、ルンルン気分で下山する 、ザッテルからは、アレッチ氷河を目指して一直線に降りる。  登攀ルートとは違い、雪が深く急な雪面を腰まで、埋まりながらも、転がる様に駆け下った、 全身雪ダルマになる、夏だと言うのに、新雪、粉雪である。やっとの思いで斜面から這い出てア レッチ氷河に出る。
 氷河を暫く歩いて、ヨッホ駅に向かう最後の登りが辛い、10時45分やっとヨッホ駅に着く。 観光客で賑わう駅でポール氏と握手し別れた。


   【 山頂直下の難所 】
 
               【 ザッテル雪庇10mの難所 】


   【 ザッテルを帰り見る 】